三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

大西洋に広大な「死の海」出現

「海藻」大繁茂で環境激変の恐怖

2023年5月号

 南北アメリカ大陸とアフリカ大陸の間に広がる大西洋で、ホンダワラ科の海藻「サルガッサム」が近年、大量発生している。二〇一一年ごろからメキシコや米国の大西洋岸の海辺に流れ着き、最近は人気リゾートの周辺にも大量に押し寄せている。死んだ魚や微生物とともに海辺に流れてくるため、一帯に悪臭が立ち込め、観光産業が崩壊した地域もある。
 日本の高度成長期に頻発した赤潮と類似の現象だが、サルガッサムは地球的規模で拡大し、九千キロメートルもの帯状に広がっている。農業用水や家庭排水の流入で海水が富栄養化しているのが原因とされ、海洋学者たちは「これからもっと悪くなる」と警告している。

フロリダやカンクンが壊滅的打撃

「ついに来た」
「これはクレイジーだ」
 四月中旬。フロリダ州大西洋岸のビーチはどこも、大騒ぎになった。中でも、ケネディ宇宙センターがある一帯「宇宙海岸」は、どこも藻で覆いつくされ、観光客は早々にホテルに引き返した。死んだ藻は、耐えがたい腐乱臭を放つ。行政機関には「何とかしてくれ」という苦・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます