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タイ王室「凋落」で進む国家分断

収まらぬ「政情不穏」の底流

2023年5月号

 タイのプラユット首相が下院を解散し、五月に総選挙が行われる。プラユットが最大与党のパラン・プラチャーラット党(PPRP)から離脱し、側近のピラパン元法相が党首を務める新党、国家建設タイ合同党(UTN)に合流したため、与党は分裂選挙を強いられることになった。
 軍事クーデターで国を追われたタクシン元首相の次女、ペートンターンを首相候補の一人に据えるタイ貢献党が第一党となるのはほぼ間違いない情勢だ。一方、日本の大手メディアではそれほど取り上げられていないが、伏兵となるのが急進的な野党の前進党である。タイ最大のタブーとされる王室改革を訴え、「Z世代」の若者たちの支持を集めている。選挙の結果次第では、代替わりで権威が凋落しているタイ王室の未来を揺るがしかねない。
 タイ国立開発行政大学院(NI
DA)が三月下旬、首都バンコクの有権者を対象に実施した「次期首相にふさわしい人物」を問う世論調査で、前進党のピター党首が二五・〇八%の支持を得て、タイ貢献党のペートンターン(二四・二%)、プラユット(一八・二四%)を抑えて初めてトップになった。
 一九八〇年生ま・・・

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