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経済

量子技術も米国の「属国化」

「国産機開発」を阻む亡国の輩たち

2023年5月号

 東京大学、シカゴ大学、IBM、グーグル、この四者の取り合わせの意味は深長と言っていい。
 G7広島サミット―。今月の米国大統領ジョー・バイデンの来日に合わせ、密かに日米の科学技術協力が準備されている。四者は量子システムの共同研究に向けて覚書を交わすというのだ。にわかに持ち上がった日米協力に首相官邸は首を傾げたが、一部の官僚からは納得の声が上がった。
「これはエマニュエル大使の肝煎りの事案。首相が量子コンピューターの国産機開発に距離を置いたのは、このせいか」
 駐日米国大使のラーム・エマニュエルは元シカゴ市長である。また同市とシカゴ大学は、IBMの量子コンピューターを活用した社会実装の一大拠点だ。そこへ東大を呼び込む仲介役をサミットの場で演じ、存在感を示したい米国大使の思惑は明らかだが、当の東大は困惑している。というのも、エマニュエルの仲介はこれが初めてではない。首相・岸田文雄の一月の初訪米の際も、東大総長・藤井輝夫は随行を求められ、IBMとの関係強化が画策された。
 執拗な圧力は何を意図するのか―。それは、IBMの百二十七量子ビットの最新マシン・・・

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