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社会・文化

浄土真宗本願寺派で前例なき「内紛」

教義の解釈巡り「分裂」の危機

2023年5月号

 昨年来、宗教を巡る問題が相次いで噴出したが、多くは新興宗教に関するものだった。しかし仏教に代表される伝統宗教も人口減少や生活スタイルの変化の影響を受け、曲がり角に立つ。仏教系の宗教法人として国内最大の信徒を抱える浄土真宗本願寺派で、前代未聞の内紛が勃発している。
 今年は浄土真宗の祖、親鸞聖人の生誕から八百五十年、立教開宗から八百年という節目にあたる。京都の本山、いわゆる「西本願寺」では三月二十九日から五月二十一日までの期間、特別な法要が行われている。しかし、本山の方針を批判する有志グループが三月と四月に抗議の声明文を相次いで発表するなど、落ち着いて法要できるような状況ではない。
 発端は今年一月十六日に、新しい「領解文」が発布されたことだ。領解文とは、本願寺派の中興の祖である蓮如上人が作ったとされ、親鸞の教えを要約したもので本願寺派の中では極めて重要な文書だ。得度する際にはこれを暗誦するほか、各寺院の法要でも出言される。十五世紀に没した蓮如の領解文が脈々と受け継がれてきたのだが、突如として新たなものが出現したのだから動揺が広がった。

石上総長の影が見え隠れ・・・