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連載

テイレシアスの食卓 vol.02

食が示すアイデンティティ
河井 健司

2023年5月号

 レストラン営業法なるものが、フランスには存在する。
 例えばハンディキャップを持つ人達への配慮は、当然ながら義務であると明記されているし、ミネラルウォーターにはワインと異なり軽減税率を適用させなければならない。
 事細かく定められているが、とりわけ大事な項目として、消費税とサービス料込みの価格、つまり客が実際に支払う金額の表示が義務付けられている。さらには、料理内容を記した価格付きメニュー表を店舗前に掲げなければならない。当たり前のことかも知れないが、これらは道義的に正しいといえよう。
 さて、おもてなしを謳いオリンピック招致に成功した東京であるが、ジャンルを問わず高級飲食店では、いわゆる税サ込みの価格表示を実施している店舗は、残念ながら極めて少数派である。全国区に広げても多くはなかろう。あまつさえ、シングルチャージなるものを四万円も請求する店舗まであるのだからおそろしい。その実体は、お一人様罰符ともとれるものだが、例えばホテルでのツインルーム一人利用や、キャバクラでの出来事ではない。世界的な評価本で高得点を得ている高級店でまかり通っている現実の話である・・・

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