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連載

新大学評判記 第41話

東京農工大学 「埋没国大」の高い将来性

2023年5月号

 東京都内には東京大学を頂点に国立大学が十二校あるが、「最も目立たず、国立という認知度も低い」大学が東京農工大学(農工大)といって間違いない。東京医科歯科大学、東京外国語大学、東京藝術大学などと並ぶ専門性の高い大学だが、外大、藝大と違って、所在地も研究・教育の内容も思い浮かばない“埋没大学”。だが、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに食糧安全保障が深刻な懸念となるなか、食糧増産やコロナなど新型感染症も見据えた微生物由来の安全かつ安価な医薬品開発を農工大に期待する声は日々、高まっている。
 JR国分寺駅からまっすぐ南に十五分ほど歩くと、控えめな石づくりの門と木の板に手書きの大学名、長くない銀杏並木の向こうには国立らしいがコンパクトな薄茶色の時計台付き建物がみえる。何もかも地味なのが農工大の特徴だ。
 昨年、大きな話題になった東京工業大学と東京医科歯科大学の統合。医理工に絞って東大に対抗する世界トップ水準の研究主体の大学を創設する構想で、来年度中には「東京科学大学(仮称)」として発足する予定となった。このニュースが流れた時に大学関係者に浮かんだのは・・・

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