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社会・文化

「テロのない国・日本」という幻想

政界と警察の呆れる平和ボケ

2023年5月号

 衆院補選の応援演説会場で起きた岸田文雄首相襲撃は、警察当局による長年の「不作為」が招いた事件だ。政治家・政党関係者が選挙運動中の襲撃リスクを過小評価していると認識しながら、衝突を恐れ、これを是正する努力をしてこなかった。「要人の命を護る」という使命に全力で向き合ってこなかったツケがまわったといえる。
 昨年七月の衝撃的な事件に続き、警察当局はまたしても要人警護の「穴」を露呈した。「今回は誰も命を落とさずラッキーだった」と警察幹部は語る。そしてこう続けた。「また、同じことが必ず起こる」。
「再び要人が襲撃された……」
 重苦しい空気が広がる中、四月十七日午前に行われた松野博一官房長官の記者会見は、警察幹部の間に安堵をもたらした。「新たな警護要則に基づき、警察庁が事前に計画を確認し、和歌山県警においても必要な態勢を構築するなど、必要な措置は講じられていたものと聞いている」。松野長官が、警察の対応に問題はなかったとの認識を表明したからだ。

「警備側に落ち度なし」の拙速
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