三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

「溶ける北極・南極」が生む世界熱波

異常気象「常態化」の悪夢

2023年6月号

 北極と南極の温暖化が、地球全体の温暖化を遥かに上回る速度で進行している。
 地球全体では「産業革命以前」の時期に比べ、ざっと一・一度、平均気温が上がっているが、北極と南極では、第二次世界大戦後の時期と比べて、それぞれ平均気温が三度も上昇している。
 北極と南極の氷が溶けていけば、地球温暖化は加速度的に進行するとされている。近年は、季節の変わり目となる二~三月に、南極と北極で同時に異常高温を記録するという珍現象が起きている。研究者からは「極地の異変は、異常気象を一層進める」と警戒する声が強まっている。
 今年の冬、北欧の研究者の間で「IPCCは間違っているのではないか」という声が湧き起こった。IPCCとは、「気候変動に関する政府間パネル」のこと。地球温暖化の進行について、警鐘を鳴らし続けている国際機関だ。
 スウェーデンやノルウェーの科学者たちは、「北極圏で実際に起きていることは、IPCCの予測より、温暖化の速度が速くて、深刻な影響を与えている」と口をそろえる。
 スウェーデンのエーテボリ大学の研究チームは過去数十年にわたり、北極海の深・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます