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社会・文化

鶏卵不足「農水省失政」の副作用

進む輸入依存と「液卵」の伸長

2023年6月号

 夏を迎え、猛威を振るった鳥インフルエンザはようやく収束しそうだ。しかし、殺処分された採卵鶏は全国の飼養羽数の一四%に相当する一千七百万羽を超え、供給力の回復は容易ではない。卵の不足と値上がりは長期化しそうだ。農林水産省の需給調整の失敗であぶり出されたのが「液卵」という裏方の存在だ。
 農水省は当初、鳥インフルエンザの影響を楽観していた。殺処分が飼養羽数の約一割に達した時点でさえ「小売りの価格はそんなに変わっていない(中略)スーパーなどの卵は不足している状況にはない」(今年二月十四日、野村哲郎農相)と自信を示していた。
 同省は、卵が不足すると殻付き卵の店頭での確保を最優先する。鶏卵の五割は殻付きで家庭向けに出荷されている。日本では、TKG(卵掛けご飯)やすき焼きなど生卵を食べる食文化があり、消費者は卵の鮮度にこだわるからだ。
 供給不足になると、スーパーの店頭などでパニックが起きるのを回避するため、農水省は生産者に対して「飼い増し」を促す。廃鶏(一定の規格の卵を産めなくなった親鳥の処分)を先に延ばし、サイズが小さくても殻付き卵を家庭用に回すことで店頭での・・・

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