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政治

無駄金となる防衛費「四十三兆円」

自衛隊「抜本強化」には至らず

2023年7月号

 最近の訪日外国人観光客の大幅増の誘因である円安の影響が、日本の防衛政策にも及んでいる。海外から調達する防衛装備品の価格が、円建てだと高騰するからだ。防衛力抜本強化のために防衛費大幅増を進める岸田文雄内閣のアキレス腱になりかねないとの懸念も浮上している。
 二〇二三年度当初予算の防衛費は六兆六千一億円(在日米軍の再編などに関する費用を除く。以下同)と、「五年で四十三兆円」を積んで国内総生産(GDP)の二%に引き上げる目標達成に向けた滑り出しとしては上々に見える。
 通常国会で防衛費をめぐる論戦が低調だったのは、二三年初頭に総理大臣の岸田が打ち出した「次元の異なる少子化対策」に野党の関心が移ったためで、二兎を追わせて一兎もとらせない戦術を描いたのだとすれば、したたかだ。
 それでも防衛省幹部の表情は浮かない。「円安とウクライナ戦争で、計画通りの装備品調達は難しい」と見るからだ。
 中国、ロシア、北朝鮮と隣接する日本の安全保障の厳しさを考えれば、岸田内閣が掲げる防衛力の抜本強化に何年もかけている余裕はない。だから、米国から既製品を大量購入すればいいと・・・

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