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経済

真夏の「電力逼迫」最悪シナリオ

「酷暑で節電」が巻き起こす人災

2023年7月号

 今年の夏は、扇子と団扇が必需品になりそうである。政府は六月九日、二〇二三年度夏季の電力需給対策をまとめ、七月の最も暑い時期に電気が足りなくなるおそれがあると明らかにした。とりわけ厳しいのが首都圏で、発電の余力を示す予備率は、危険水域とされる三%をあと少しで割りそうなレベルに達している。どこかの火力発電一基が故障でもすれば、首都圏の住民は冷房の停止といった節電を余儀なくされる。最悪のケースは、首都圏各所を闇へと落とす計画停電である。
 政府が示した資料によると、東京エリアの予備率は七月の最も厳しいときで三・一%と試算された。東京エリアとは、首都圏と静岡県の一部を指す。予備率に関しては、政府自身が「安定供給には予備率三%が最低限必要」と明記しており、東京エリアの数字がいかにぎりぎりであるかがわかる。さらに恐ろしいのは、「電力の需要は三%程度のぶれがある」と注記しているところだ。通常レベルのぶれが発生すれば、首都圏の電気は途端に枯渇するのである。
 最低限必要なレベルはクリアしているのだから安心だ、との見方もあろうが、この三・一%が関係者の懸命な努力によって創り上げられ・・・

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