三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

日本の科学アラカルト 155

持続可能性を模索する「ゴム」研究 いまだに「謎」が残る伸縮材料

2023年7月号

 ゴムを人類が利用するようになった経緯は判然としない。記録に残っているのは、十五世紀後半、コロンブスが航海中に、原住民が大きく跳ねる球で遊んでいるのを発見したという謂れだ。しかし場所も特定されておらず、現在のジャマイカやプエルトリコという説がある。このゴムがヨーロッパに持ち込まれたが、長らく消しゴムや靴の材料として使われていた。
 その後、十九世紀に入り、硫黄を混ぜて加熱するとゴムの弾性が飛躍的に向上することが偶然、発見された。そしてタイヤとして需要が増加し、東南アジアには欧州各国のゴムのプランテーションが造られ大量に生産されるようになる。二十世紀になると石油を原材料とした合成ゴムが誕生するが、今もなお、タイヤに含まれているゴムの約半分は天然ゴム素材だ。
 古くてありふれた材料であるゴムだが、実はいまだ解明されていない謎もある。持続可能社会を目指すために、タイヤの大量廃棄を減らすための研究も進められているのだ。
 昨年十月、理化学研究所や東京工業大学、住友ゴム工業の研究グループは、ゴム内部の構造に関する新発見を発表した。
 前述した通り、天然ゴム・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます