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経済

日本財政を救うのは「働く老人」

吉野直行 (慶應義塾大学名誉教授)

2023年7月号

 ―国債を発行し続けても日本は財政破綻しないという議論がありますが、事実でしょうか。

 吉野 国債の需要がなくなれば、日本はすぐに財政破綻する。過去には国債の需要というのは確実にあった。金融機関は貸出先も限られているので、余剰資金で国債を買っていた。それが行き詰まりそうになって、「黒田日銀」が国債を買わざるを得なくなった。現在は、短期国債が増加して、一年以内にグルグルと回している。しかし、そこに不安定性が加わると、長期国債を買ってくれる人はいるだろうか。銀行と生命保険、年金基金が国債を買い支えていたが、今後は難しくなる。

 ―貨幣をどんどん供給すればいいという「現代貨幣理論(MMT)」も間違っていますか。

 吉野 間違っているし、少なくとも米国で信じている者はいない。MMTを主張する学者は、国債の大量発行による国債価値の暴落について考慮していない。日本で貨幣供給を増やしてもインフレが起き・・・

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