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漁獲激減の「ベーリング海」

カニ「百億匹」が消え失せた

2023年8月号

 米アラスカ州沖のベーリング海で、百億匹以上いるとされたズワイガニが姿を消し、地元経済に壊滅的な打撃を与えている。地球温暖化に伴う水温上昇が主因と見られ、昨年と今年は禁漁となった。同州を流れる河川では、遡上するサーモン(サケ)の個体数激減も伝えられている。豊かな自然から「最後のフロンティア」と呼ばれる同州を襲った惨事に、米政府はなすすべがない状態だ。
 ベーリング海のカニ漁はここ数年、不漁が続いていた。最近はカニを見つけること自体が難しくなり、ついに昨年は、漁場の海域から全くカニがいなくなった。
「ふだんの漁場だけでなく、数十キロ、数百キロ離れた場所まで行ってみたが、どこにも見当たらない。カニは消えてしまった」と、アラスカで漁船を所有するガブリエル・プラウト氏は言う。
 ベーリング海のカニは最近まで「百億匹以上」とされた。二〇一〇年頃から減少が顕著になり、州当局は乱獲取り締まりを強化した。一時上昇が見られたが、一五年頃から急激な減少が始まった。
 この年は異常高温で、ウミガラスがバタバタと死んでいった。推計百万羽が死んだと見られる。州メディアや当・・・

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