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中国外相「秦剛更迭」の深層

対米路線対立と「嫉妬」の炎火

2023年8月号

 中国の秦剛外相が七月二十五日に開催された全国人民代表大会常務委員会で更迭され、外交問題を統括する共産党中央政治局員である王毅氏が前職である外相を兼任する異例の事態となった。理由は明らかにされず、謎めいた人事だが、中国外務省内では「秦氏は省内の権力闘争に敗れた」と指摘する人が多い。習近平主席に気に入られ、異例の出世を遂げた秦氏は王政治局員、馬朝旭外務次官ら習外交の強硬路線を体現すると自負する主流派に引きずり下ろされた。中国外交は一時の米欧との協調模索から再び、戦狼外交に戻る可能性が高い。

「ごますり外相」への反発

 五十七歳の秦氏は昨年十二月、サプライズ人事で外相に抜擢された。駐米大使としてワシントンに赴任してからわずか一年半、対米外交で何の実績もあげないまま、五歳年長の斉玉・筆頭外務次官や、二歳年上で「ポスト王毅」と目されていた馬朝旭次官を追い越した。この人事が明らかになった昨年、外務省内では「ごますり野郎」と罵る声があがったという。
 秦氏の経歴をみれば、外務省主流派の反発はわかる。出身大学は国・・・

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