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連載

現代史の言霊  第64話

北朝鮮「六カ国協議」 (二〇〇三年)
伊熊 幹雄

2023年8月号

悪の枢軸が世界平和を脅かしている

ジョージ・ブッシュ(米大統領)


 今回は北朝鮮の「失われた二十年」の話である。二〇〇三年八月二十七日、中国・北京の釣魚台迎賓館で、北朝鮮の核問題について、日本、米国、韓国、中国、ロシアが北朝鮮と話し合うという「六カ国協議」が開幕した。この時は二日後の二十九日に閉幕した。
 協議は、〇七年三月の第六回まで継続した。それ以上は開催されずに、結果的には成果なく終わった。だが、北朝鮮の思考回路を知る上で、協議の経緯は今も重要な教材を提供してくれる。
 米国の北朝鮮専門家、ジョナサン・ポラック氏によると、北朝鮮の核開発への決意は、一九四八年の建国前に遡るという。建国の父、金日成は四五年八月の広島、長崎への米軍による原子爆弾投下で、強力な大日本帝国が無条件降伏に追い込まれたのを見て、原爆保有の重要さを心に刻んだという。

「核」への執念

 金日成はまた、核兵器が絶対権力の源泉になることも理解し・・・

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