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連載

金融の世紀

第8回【ジェイ・クック商会の鉄道事業】
黒木 亮

2023年8月号

 大量の国債販売で北軍の勝利に貢献した投資銀行家、ジェイ・クックは、一八五〇年代に、アイオワ、ウィスコンシン、ミネソタなどに土地を入手し、一八六六年から六九年にかけて、姉の夫でジェイ・クック商会のパートナー、ウィリアム・ムーアヘッドとともに、ミネソタ州ダルース(Duluth)周辺で材木に適した松林三八〇〇〇エーカーを取得していた。
 ダルースは当時、五大湖の一つ、スペリオル湖最西端の小さな集落だったが、クックはここに港を建設すれば、周辺地域が大いに発展すると確信した。
 ちょうどその頃、スペリオル湖・ミシシッピ鉄道(Lake Superior & Mississippi Railroad Co.)の案件が持ち込まれた。その名のとおりスペリオル湖とその西一一〇キロメートルほどのところを流れるミシシッピ川を結ぶ鉄道で、三〇マイルほどが建設されたところだった。
 日本で明治維新が起きた一八六八年の秋、ジェイ・クック商会と、クックがかつてパートナーを務めたEWクラーク商会は、それぞれ二百七万七千ドルと五十二万一千ドルのスペリオル湖・ミシシッピ鉄道の社債を引・・・

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