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経済

トヨタ章男「報酬十億円」の滑稽

理由なき大増額が映す「統治不全」

2023年8月号

 トヨタ自動車が有価証券報告書で開示した豊田章男会長の役員報酬が、周囲の波紋を呼んでいる。三月末まで務めた社長としての最終年度(二〇二二年度)の報酬は九億九千九百万円と、ほぼ十億円に増えたからだ。二一年度の六億八千五百万円から五割増という大盤振る舞いで、東京商工リサーチの調査によると、上場企業の取締役報酬額で八位に入った。
「日本一の企業の経営トップにふさわしい額」との肯定的な声もあるが、上位七人はいずれも創業者かプロ外国人、ないしは熾烈な会社員競争を勝ち抜いた経営者だ。「創業家の御曹司枠」な上、かつトヨタのEV投入の出遅れを招いた張本人にふさわしい報酬かは疑問符が付く。加えて上場企業としての説明責任を果たす上で、はじいた計算式には異様なまでの「ご都合主義」が垣間見える。
「米国の大企業と比較すれば、豊田会長の報酬は三十億~四十億円になってもおかしくなかった」。トヨタが有価証券報告書を開示した六月三十日、東崇徳・総務人事本部長は親しい記者のみを集めたオンラインレクで、周囲の声を押し切るように高額報酬の正当性をアピールした。
 トヨタの役員報酬は、社外取締役・・・

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