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社会・文化

高齢者「不眠治療」に光明

より安全な「新薬」が続々登場

2023年8月号

 不眠は高齢者にとって大きな悩みだ。六十歳頃から増え始め、八十代では三人に一人が不眠に悩む。不眠症を克服することで、高齢者の健康と生活の質(QOL)は大幅に改善する。しかし、睡眠薬は様々な副作用が問題だった。「怖い」という先入観で使うことにためらいもあった。それが近年、世界でより安全性の高い新薬の開発が急速に進む。高齢者の不眠症治療は大きく変わろうとしている。
 不眠症は入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒に大別されるが、高齢者に多いのは中途覚醒だ。老化により体内時計が変化することに加え、睡眠が浅くなるため、物音や尿意で目を覚ましてしまう。厄介なのはQOLが低下することに加え、糖尿病や高血圧を悪化させ、急性心筋梗塞、心不全、さらに死亡のリスクを高めることだ。中途覚醒の場合、急性心筋梗塞のリスクを三〇%、死亡リスクを九%程度高めると報告されている。
 治療にあたり、まず注目すべきは多くの高齢者が抱える合併症だ。一部の患者では、合併症を治療することで不眠症も改善する。その代表が精神疾患、特にうつ病だ。このような患者では、抗うつ薬が不眠症を改善する。
 うつ病と並ぶ重要・・・

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