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独仏「存在感ゼロ」の耐え難さ

欧州戦時に破廉恥な「傍観外交」

2023年9月号

 欧州連合(EU)が深刻な「指導力の危機」に陥っている。ロシアが昨年二月にウクライナに軍事侵攻して以後、EUは「何をすべきか分からない」という混迷に陥ってしまった。EUの両輪であるべきドイツのオラフ・ショルツ首相とフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、不仲のあまり話すこともまれになった。
 欧州の軍事専門家たちからは「独仏は世界の舞台から姿を消した」という厳しい評価が下される。欧州外交はこのまま、米国や中国、ロシアの影に埋没していくという懸念が各国で強まっている。
 ドイツの凋落ぶりを象徴する事件が、八月十四日に起きた。アンナレーナ・ベアボック外相を乗せたドイツ政府の専用機(エアバスA340)がアラブ首長国連邦(UAE)沖の上空で、不調を起こし、アブダビ空港に緊急着陸した。
「頭にきたなんてもんじゃないわよ!」というのが、外相の怒りのSNSだった。実はこの専用機は直前にも異常が見られ、アブダビに緊急着陸していた。長時間の整備点検などで「OK」が出たあげくに、二度目の不調とあって、外相は機内で怒りまくった。「どんな言葉を使ったかは、お話しできない。そもそ・・・

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