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経済

米経済の時限爆弾「商用不動産」

「市況崩落」その時どうなるか

2023年9月号

 世のヘッジファンドマネージャーたちは今「ソフトランディング」の物語を囃し立てながら、記録的な「米国債ショート(売り持ち)の山」を築いている。何かが壊れるまで長期金利は上がっていくのだろう。「商用不動産」がその「何か」になりそうだ。
 不動産業界で最も影響力のある投資家の一人であるスターウッド・キャピタルのCEOバリー・スターンリヒト氏は七月、業界の危機的な状況を訴えた。
「これは不動産を襲うハリケーンだ。現在、我々は(最も強い)カテゴリー5のハリケーンのさなかにある。FRB(米連邦準備制度理事会)の今後の方針についてある程度の理解が得られるまで業界全体に暗雲が垂れ込めるだろう」
 二〇〇八年の金融危機時の破綻処理の前線にいた関係者は「通りを歩けばわかることだ」と話す。
 サンフランシスコのシャッター商店街の前にはゴミ、盗品の山、糞尿の垂れ流し、注射器と段ボールが路上に転がり、医療用麻薬フェンタニルの包み紙が風に舞う。
 店舗が撤退し、企業が移転。さらにはITベンチャーバブルが崩壊し、人流が減っている。「在宅勤務率三割」と言われるが、人・・・