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経済

日の丸「半導体製造装置」虚構の繁栄

「世界シェア二位」の哀れな現実

2023年9月号

「日本は2ナノ半導体を提唱しているが、いずれは物理的な限界が来る」
 八月七日、東京都内で開かれたフォーラムに登壇した蔣尚義・鴻海グループ最高半導体戦略責任者はこう言い放った。台湾出身の蔣氏は過去にTSMCの研究開発を率い、一時は中国の最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)にも籍を置いた大物だ。出席者は、「日の丸半導体」を目指すラピダス路線に、蔣氏が疑問を呈したと受け止めた。
 経済安全保障の文脈で半導体が語られるようになって久しい。経済産業省はこの夏から新たに規制を強化したが、実はその実効性はほとんどない。原因は経産省による掟破りの対米追随と、日本の技術への過信がある。「半導体のシェアは低下しているが、製造装置は強い」―。このセールスポイントが幻想になりつつある。

対中輸出規制に実効性なし

 経産省は七月二十三日に省令を改正し、先端半導体の製造装置二十三品目に対する輸出規制の強化に踏み切った。外為法に基づき軍事転用のおそれのある民生品をリスト規制に追加する手続きで、米国や韓国、台湾など・・・

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