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社会・文化

こんな田舎に オーケストラ⁉

過疎の街「豊後竹田」の挑戦

2023年9月号

 大分から熊本へと九州を横断する豊後街道近くに、竹田市がある。旧市街中心に遺る岡城趾は、幼少期をこの地で過ごした瀧廉太郎の「荒城の月」作曲に霊感を与えたとされる旧跡。豊かな歴史文化資産を有する一方で、人口二万人強のうち八十五歳以上の高齢者比率全国一位の市(二〇二〇年国勢調査)としても話題になる自治体だ。
 増加する過疎高齢化地域を活性化すべく、二〇〇九年に総務省は「地域おこし協力隊」を創設した。特別交付税を財源に、都市からの移住者を自治体が期間雇用、任期満了時には定住に向け援助を行う。竹田市は積極的に制度を活用、二二年度は二十名が市内に生活拠点を移している。
 新型コロナ禍の二一年六月、十一人の奏者を擁し竹田市総合文化ホール「グランツたけた」を拠点とする「TAKETA室内オーケストラ九州」が誕生した。クラシック音楽愛好家は人口の一%と言われる日本で、竹田市はプロ楽団を支えられる規模ではない。音楽学校や楽器メーカーもなければ、音楽好き地元企業オーナーがいるわけでもない。創設の核となったのは、地域おこし協力隊員として竹田市公共ホールに採用されたコントラバス奏者森田良平、・・・

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