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経済

東京電力「小早川長期政権」の弊害

原発事故前「旧体制」に先祖返り

2023年10月号

 東京電力ホールディングスの株価が九月十五日、一時七百円を超えた。七百円台に乗せるのは二〇一九年四月以来、実に四年半ぶりのことだ。二〇年十二月には二百六十六円の安値を付けたが、その後、東電株は急回復。安値で拾っておけば、二・五倍を超える利益を生み出せた計算である。
 東電の株価回復は今年実施した料金値上げが大きな要因だが、上昇に弾みをつけたのは、ひとえに福島第一原子力発電所の処理水問題に目処をつけたからだと市場関係者は指摘している。処理水問題は、福島第一原発廃炉の最大の桎梏であったが、八月二十四日、海への放出を始めたことにより、その枷はようやく外れた。
 株価とともにうなぎのぼりなのが、小早川智明社長の評価である。処理水問題が拗れた原因は、遡れば日立製作所出身の川村隆前会長が放った失言にあった。川村前会長が「(海洋放出は)もう判断している」と発言し、漁業関係者の猛反発を浴びたのが一七年七月のこと。それから何年も理解活動に勤しんだのは、川村前会長と同時に就任した小早川社長であった。
 東電の歴代社長は小早川社長を含めて十四人。「処理水の処分を実現した社長とし・・・