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経済

《クローズ・アップ》佐野 傑(電通次期社長)

五輪談合「責任逃れ」のトップ交代劇

2023年12月号

「社長になることは確実だったが、ここまで早いとは思わなかった」
 電通グループ関係者の一人はこんな感想を漏らす。電通グループは事業会社の広告代理店「電通」統括執行役員の佐野傑が、来年一月一日付で社長執行役員となる人事を発表した。二〇二二年一月に電通の社長となった榑谷典洋はわずか二年でお払い箱になる。しかも、持ち株会社である電通グループの役員としても残らない見通しだ。冒頭のグループ関係者は「そもそも榑谷さんはワンポイント・リリーフだった」と語る。
 今年二月、東京五輪談合事件で、電通グループが起訴されたことを受け、榑谷は月額役員報酬の三〇%を半年間返上した。これにより、談合事件について、ひとつの区切りがついたことが社長交代の理由とみられる。
 電通は足元の業績不振の打開が喫緊の課題だ。人事と同じく十一月十四日に発表された今年第3四半期決算で、電通グループは通期の最終利益見通しを六百九十二億円から三百三十三億円に下方修正。株価は直後に約四百円急落したまま、四千円前後で推移した。
 原因は複合的だが、一連の五輪汚職や談合によるイメージ悪化の影響は無視で・・・

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