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ベネズエラ「ガイアナ侵攻」の狂気

米国の裏庭で「現状変更」の策謀

2024年1月号

 南米北部に広がる十六万平方キロの熱帯雨林が十二月初旬、突如世界の注目を集めた。日本の本州よりやや小さい国土に約七十九万人が暮らす小国ガイアナの東部分、領土の実に七割を占める「エセキボ地域」を、隣国ベネズエラの反米左派マドゥロ大統領が「世界とガイアナは知る必要がある。エセキバは我らのものだ」と宣言し、「グアヤナエセキバ州」と一方的に命名。国営石油会社PDV
SAの操業権や鉱山会社の開発権を相次いで認める法案をまとめたのだ。
 緊張が高まる中、当事者であるマドゥロ氏とガイアナのアリ大統領は十二月十四日、カリブ海の島国セントビンセント・グレナディーンで会談し、事態の激化を回避することで合意。騒動は勃発から半月でひとまず収拾したかにみえる。
 中南米専門家の間では今回の騒動について、二〇二四年後半に選挙を迎えるマドゥロ氏が、地域の緊張を高めて支持率向上に利用しようとした「政治的パフォーマンス」と捉える向きが多い。しかし、独裁体制を完成させ、中央選管も意のままに操るマドゥロ氏にとって、三選は既定路線。これで収まると考えるのはあまりにナイーブだ。権力基盤をさらに固め・・・

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