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経済

《企業研究》第一生命

超割高M&Aが招く「本業危機」

2024年1月号

「開示資料や記者会見などで『かねて買収を検討していた』などと説明しているが、一体どこまで本気度の籠った検討だったのか。いくつか考えられるM&A案件の中の単なるシミュレーションの一つといったところだったのではないか」。外資系金融機関に籍を置くインベストメントバンカーの一人はこう首を捻る。
 パソナグループ傘下の福利厚生代行サービス最大手、ベネフィット・ワンの買収を進める医療情報サイト運営のエムスリーに対して「対抗TOB(株式公開買い付け)」の提案に踏み切った第一生命ホールディングス(HD)。
 TOB価格を、エムスリーが提示した一株一千六百円より五百円以上高い「二千百二十三円」に設定。一部に「後出し」じゃんけんとの批判は燻るものの、「訴求力のある提案だと思う」(首脳)として、ベネワン“横取り”に自信をみせる。
 だがベネワン買収がかねての腹案として引き出しの中で温められてきたのならもっと早期に、かつ機敏に反応したのでは、というのが冒頭のバンカーの疑問だ。
 ベネワンの株価は二〇二三年二月に二千三百九十円の年初来高値を付けた後・・・

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