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経済

《企業研究》富士通

英国冤罪事件の「諸悪の根源」

2024年2月号

 問題があるとの認識や疑惑を持ちながら、あるいは問題に気付いていないふりを装って何らの手立ても講じないまま〝害毒〟をまき散らす。事実だとすれば「まるでIT業界の『チッソ』」―。都内に本拠を置く独立系中堅SI企業の幹部はこう断罪する。言うまでもない。「水俣病」の原因物質とされる有機水銀を長年にわたって垂れ流し、地域住民らに深刻な健康被害をもたらした化学肥料メーカーだ。
 IT大手の富士通が英国で袋叩きに遭っている。同社が納入した会計システムのバグ(不具合)や欠陥に起因する形で「全く落ち度がない」(リシ・スナク英首相)にもかかわらず、数多くの人々が罪に問われて「人生と名声を破壊される」(同)という、英国史上最悪ともいわれる冤罪事件の〝主犯格〟の一角と見做されているためだ。
 事件は英国の郵便局事業の窓口業務を担う英ポストオフィスを舞台に起こった。英議会の報告書などによれば、始まりは1999年だったという。それまで紙ベースで行われてきた年金受け取りなどの窓口業務の処理に初の本格的なコンピューターシステムとして富士通が買収した英子会社が開発した「ホライゾン」が導入された。と・・・

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