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連載

新大学評判記 第50話

順天堂大学 盤石経営が抱える「時限爆弾」

2024年2月号

 順天堂大学は9学部・5大学院研究科・6附属病院から構成される総合大学だ。看板は医学部である。2012年に東京大学医学部附属病院で、上皇陛下の心臓バイパス手術を執刀した天野篤医師ら、日本を代表すると言っていい「スター医師」が揃う。附属病院の収益力は群を抜く。大学経営は盤石である。だが、屋台骨である附属病院に大きな問題が浮上してきた。「スター主義」の陰ともいえる雇用構造の歪みが大きな不安材料となっている。
 医学部の歴史は古い。1838年(天保9年)に佐藤泰然が江戸薬研堀に蘭方医学塾「和田塾」を開設したことに始まる。その5年後、千葉県佐倉に移転し、順天堂と称する。そのレベルは高く、幕末には「西の長崎、東の佐倉」と称された。維新後には、佐藤泰然の次の堂主佐藤尚中が大学東校(現東京大医学部)の初代校長となるなど、明治の医学界をリードした。現在、順天堂大教授に東大OBが多い理由である。
 大きく飛躍させたのは現在の小川秀興理事長だ。1941年に東京で生まれ、北京で育った。香川県の私立大手前高校(現、大手前丸亀高校)から順天堂大医学部に進み、卒業後は皮膚科を専攻した。2000・・・

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