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EUと米テック企業の「黒い結託」

非正規労働者「不当搾取」を推進

2024年3月号

 ウーバーイーツの配達員などギグワーカーの権利保護を目指す欧州連合(EU)の規制法案が破綻寸前に追い込まれている。ギグワーカーを一定の条件下で従業員とみなし、企業側に最低賃金や社会保障の確保を義務付けるものだが、その内容を骨抜きにされたあげく、承認が棚上げとなった。フランスなど一部加盟国が、規制に反発する米テック企業らに寄り添う動きを見せたためだ。EUのデジタル規制と言えば、米テック企業のビジネスモデルに切り込む役割が期待されているはずだ。だが、その内部では深刻な癒着が蔓延する。
 ギグワーカー保護法案は2021年12月、EUの行政執行機関にあたる欧州委員会が提案した。欧州委の原案では、企業が報酬の水準を決めていることや、アプリなど電子的手段で業務を管理していることなどの5つの基準のうち、二つを満たせばギグワーカーを従業員と推定すると定めていた。これは「雇用の推定」と呼ばれ、従業員ではないとみなす場合は企業が反証しなければならない。
 EUの立法過程では、欧州委の原案を基に加盟国で構成する理事会、欧州の議員による欧州議会がそれぞれ修正案を作成する。その後、欧州委、理・・・