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経済

《クローズ・アップ》南方 健志(キリンHD次期社長)

磯崎院政「ぬるま湯経営」を踏襲

2024年3月号

 キリンホールディングスは磯崎功典社長(70歳)が代表権を持つ会長兼CEOに就任し、南方健志取締役常務執行役員(62歳)が社長兼COOに就任する。
「9年ぶりの社長交代」と聞いたキリン社内や同社の属する三菱グループの幹部には一瞬、歓迎ムードが広がったが、磯崎氏が「会長兼CEO」と聞いて、瞬く間に失望に変わった。磯崎社長体制の9年間でキリンの地盤沈下は着実に進み、かつて国内ビールシェア60%超だったガリバー型寡占の超優良企業の面影は完全に消え、過去の蓄積に支えられて生き残る「甘い経営」の構図が固まったからだ。
 磯崎氏がホールディングス社長に就任した2015年12月期(連結決算)の売上高は2兆1969億円で、事業利益(営業利益に相当)は1247億円、直近の23年12月期は2兆1343億円で、事業利益は2014億円。売上高は微減、事業利益こそ伸びたが、在任中、豪州などでのM&Aで取得した事業の利益貢献あってのもの。基盤の国内アルコール飲料事業は値上げやビール減税があっても上向かなかった。
 最大の問題は海外でのM&Aの成功確率の低さだろう。磯崎氏の前任の三宅占・・・