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《世界のキーパーソン》トーマス・ホーマン(米国境政策責任者:全権執行官)

トランプ「移民排斥」の現場監督

2025年5月号

 米国政治で近年、頻繫に使われる言葉が「ザー(Czar)」である。語源はロシア皇帝(ツァーリ)で、彼の地の専制君主がそうだったように、特定政策分野で独裁的に強権をふるう。省庁を管轄する長官や次官が、米上院に承認されなければならないのに対し、ザーは大統領から「この政策の全権を任せる」と任命されるだけで、強大な権限を握る。
 ドナルド・トランプ大統領から「国境ザー(The Border Czar)」に任命されたのが、トーマス(トム)・ホーマンである。スキンヘッド、堂々たる体躯、鋭い光を放つ大きな目は、見るからに強面だ。
 ホーマンは、祖父の代から続く法執行官の家庭で育った。生まれはニューヨーク州ウェスト・カーセージという小さな町だ。祖父と父親は、この町の警官で、ホーマンも自然と同様の道を進むよう育てられた。学業優秀だったホーマンは、さらに高等教育機関で法学、犯罪学を学んだ。卒業後に、町の警官になった。3代目である。
 祖父や父親と違ったのは、不法移民問題に強い関心を持ち、「なんとかならないか」と探求を始めたことだ。ホーマンは連邦機関である「市民権・移民局」に入・・・

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