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社会・文化

航空自衛隊の辛く厳しい現実

「練習機墜落」隊員の深まる憂い

2025年6月号

「最後まで一般市民の安全を考えていたに違いない」。航空自衛隊のファイター(戦闘機パイロット)経験者らは口々にそう語り合ったという。空自の第5航空団(司令部・新田原基地=宮崎県)所属のT4練習機が5月14日午後3時過ぎ、小牧基地(愛知県)を離陸した直後に急降下し、近くの入鹿池に墜落した。T4は緊急脱出装置を備えていたが、使われていなかった。元パイロットの一人は「当時の機体の姿勢にもよるが、必ず池に落とそうとギリギリまで操縦桿を握っていたため、脱出が遅れたのではないか」と話す。
 T4の安全性が確認されるまで、訓練や展示のための飛行が中止された。事故に遭ったT4は飛行データを記録するフライトデータレコーダー(FDR)を搭載していなかったため、原因究明は難航しそうだ。
 空自関係者はこの状況に眉をひそめる。前出の元パイロットは「訓練飛行の停止期間が半年くらいまで延びれば、パイロットの育成に大きなゆがみが出かねない」と指摘する。

「実任務」の重い負担

 2024年版「防衛白書」によると、空自の戦闘・・・

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