参議院選を目前にして消費税をめぐる議論がやかましい。年収１０３万円の壁、夫婦別姓、シングルマザーの貧困、少子化対策など他にも争点は多いが、いずれも昭和から大きく変化した家族の有り様に、制度が追いついていないことから生じた問題なのではないか。
　妻は専業主婦で夫は終身雇用で定年まで働き、親と同居する。そんな「サザエさん」的な家庭モデルは、もはや遠い過去のものとなっている。
「サザエさん」は昭和21（１９４６）年から約28年間、新聞紙上に連載された４コマ漫画。昭和44（１９６９）年からはテレビアニメにもなり、まさに国民的漫画だった。
　ちゃぶだいを囲んだ一家の団らん。サザエさんも、その母フネさんも専業主婦である。家庭生活の中にある小さな幸福や楽しみを描いた作品だった。
　作者は長谷川町子。ホームドラマの名手だが、彼女自身は生涯独身を貫いた。「サザエさん」を発表したのは敗戦から、わずか８カ月後のこと。当時、彼女は26歳だったが、すでにプロとしての下地は身に付けていた。
　町子は大正９（１９２０）年に佐賀で生まれ、福岡で育った。両親は薩摩藩士・・・