三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月刊総合情報誌

連載

皇室の風 第201話

横路孝弘の遺言Ⅰ
岩井克己

2025年6月号

「玉砕」の戦場の現場を踏んで金縛りに遭った筆者の体験や、高松宮宣仁親王が硫黄島や沖縄の土を踏んだ時の死者の無念への畏怖の表情を前回紹介した。
 毎年8月15日の全国戦没者追悼式典では、天皇の「おことば」はほとんど不変で、三権の長の式辞も儀礼的・形式的なものが大半だ。平和国家たらんとの国是を守る決意を再確認するかのように。
 また、戦後50年の村山富市内閣以降は節目の夏に時の政権が「首相談話」を閣議決定して歴史の反省と未来への誓いを国内外に宣明してきた。ところが石破茂内閣は、戦後80年の今夏は「首相談話」は出さない方向だという。不可解だ。
「戦後レジームからの脱却」を掲げた安倍晋三首相の「談話」が「謝罪外交に終止符を打った」として、談話の閣議決定はやめたいという底意だとするならば、「平和国家」の舵取りを託せるとの信頼は得られないだろう。
 そもそも安倍談話は縷々言葉を重ねた異例の長さだったが、歴代の首相談話を引用して、それを踏襲するという徹底した間接話法にとどめていた。昭和の歴史の暗部を深く受け止め自らの立ち位置と志向を表明するのを避けた、狡猾で傲・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます