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連載

金融の世紀

第30 回【シンジケート・ローンの誕生】
黒木 亮

2025年6月号

 SGウォーバーグが1963年に手がけた世界初のユーロ債、アウトストラーデ債は、発行体はイタリア企業で、債券はドル建て、上場はルクセンブルク市場、準拠法は英国法で、調印式は英国の4%の印紙税を回避するため、オランダで行われるという、手の込んだ仕組みだった。
 その後、SGウォーバーグは、ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)債とオスロ市債を引受け、イタリアのトリノ市債のときは、投資家がポンドかドイツ・マルクのどちらでも購入できる仕組みにしてユーロ債を進化させていった。
 英国政府も、金融街シティの復活を目指し、ユーロ債市場に梃子入れした。すなわち63年8月に税制改革を実施し、無記名証券の発行を認め、発行体が英国の居住者の場合、発行税率は3%、非居住者の場合は2%という低い水準にした。ユーロ債が無記名式であったこと、利子源泉課税がなかったこと、最小額面が1千㌦であったことも、投資家に大いに歓迎された。こうした緩やかな規制と、外国の金融機関や投資家への開放的姿勢というシティの伝統的アプローチは今も不変で、人、金、取引を惹き付ける大きな要因になっている。
 これに・・・

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