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経済

《企業研究》日本たばこ産業

医薬撤退「多角化失敗」の代償

2025年6月号

 所詮は「武家の商法」に過ぎなかったのか。日本たばこ産業(JT)が医薬事業からの撤退に踏み切る。
 多角化の一環として1987年に参入。「世界に通用する画期的なオリジナル新薬を創出し、1日も早く患者に届けることを目指す」との野望とミッションを掲げて新事業に挑んだものの、40年近くに及ぶ苦節を重ねた挙げ句「見果てぬ夢」(幹部)で幕を閉じる。
 市場では「不採算事業の切り離しでむしろ収益性向上が期待できる」などとして好感ムードも漂うが、かといって脱・医薬後の成長戦略を明確に描き切れているわけでもない。「防衛力増強」を大義名分とした国のたばこ増税策など“逆風”も待ち受ける。喫煙による健康被害を巡る世界各国での訴訟リスクもなお燻り続けたままだ。
 撤退する医薬事業の受け皿として白羽の矢が立てられたのは、製薬準大手の塩野義製薬だ。計画ではまず塩野義が6月18日にかけてのTOB(株式公開買い付け)でJTの医薬品製造・販売子会社、鳥居薬品のJT保有株(持株比率54・78%)以外の株式を1株当たり6350円で取得する。
 TOB成立後、J・・・

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