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米朝首脳会談に身構える中国

東アジアを揺らす「トランプの一存」

2025年6月号

 北朝鮮の国際的な立ち位置を巡り、大手メディアが昨年から流し続けているトレンドは「ロシアと北朝鮮の接近」「ロ朝の親密な関係に困惑する中国」というものだった。ところが、水面下では全く違う動きが起きている。
 中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は5月8日、モスクワで首脳会談を行った後に共同声明を発表した。日本政府関係者は「中国が北朝鮮との関係改善に本格的に乗り出した」と語る。声明に盛り込まれた「各国に対北朝鮮制裁と(北朝鮮に対する)圧力強化の中断を促す」という文言のことだ。
 ロシアは昨年6月、北朝鮮と包括的戦略パートナーシップ条約を締結して以降、北朝鮮の核保有を事実上容認する姿勢にかじを切った。ラブロフ外相は昨年9月、「北朝鮮に用いる非核化という言葉そのものが全く意味を失った」と主張。マツェゴラ駐北朝鮮ロシア大使も今年3月、今後の米朝協議について「非核化がテーマになる可能性は全くない」と断言した。
 中国も2019年から21年まで、国連安全保障理事会でロシアと共に北朝鮮制裁決議の緩和に動いたことはあるが、最近は制裁緩和に消極的な姿勢を取っていた。{・・・

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