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台湾政権「親米路線」の限界

広がる「棄台論」に悩む頼清徳

2025年6月号

 米中両国が大幅な関税の一時削減に合意したことは「親米路線」を掲げる台湾の頼清徳政権にとって寝耳に水だった。米台の関税交渉はまだ進んでいないのに、台湾の最大の「敵」である中国と握手したトランプ政権。台湾の衝撃は計り知れない。かねて台湾では米国を疑う「疑米論」がくすぶっていたが、一歩進んだ「棄台論」(米国が台湾を見捨てる)が強まり、台湾の将来に不安を感じる人が急増している。
 米中交渉後の5月20日、台湾の頼清徳総統は台北の総統府で就任1年の演説を行った。
「米国の新しい関税政策に対応するため、私は五つの対応策を発表した」「台湾と米国は長年の民主主義のパートナーであり、積極的に交流、協力してきた歴史がある」「米国と台湾の関係をより深化させていく」
 中国語で3千字余りの短い演説だったが、7回も「米国」に言及し、米台関係重視をアピールした。一方で中国に言及する場面はほとんどなかった。
 長年総統府を取材した台湾の大手紙のベテラン記者は「対中強硬派として知られる頼氏にとって、今の最大の悩みのタネは中国ではなく、米国だ」と指摘する。「トランプ政権の対台湾・・・

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