三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月刊総合情報誌

WORLD

米中「関税戦争」は収まらない

トランプ政権「中国潰し」への執着

2025年6月号

 米中両国が相互に課した関税を一気に115%引き下げた5月12日の「ジュネーブ合意」は世界に前向きなサプライズを与えた。ニューヨークはもちろん世界の株価は反騰し、「トランプ関税前」に戻った。関税戦争の先行きに楽観ムードも漂い始めたが、これは一時的な“米中停戦合意”に過ぎない。トランプ大統領が第1期目の2018年春から本格化させた「中国のこれ以上の台頭を許さず、米国製造業を復活させる」という目標にまったく変わりはないからだ。米国は残る「対中30%関税」と上乗せ示唆だけで中国の輸出、国内産業に壊滅的な打撃を与えられることを認識すべきだ。
「米中双方はデカップリング(分断)を望んでいないという点で一致している」。ジュネーブでの交渉合意後の記者会見におけるベッセント米財務長官の発言が、ある意味で世界経済を救った。続く同長官の「今後、数週間でより包括的な合意に向けて動き出す」の言葉も含め、メディアは米中関税戦争が緩和に向かうと先読みし、伝えたからだ。
 だが、記者会見で重要だったのは、鉄鋼、自動車など特定分野の関税は維持され、さらにトランプ第1期政権で・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます