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イランは「核協議」で米国に屈するか

狭まる包囲網と「妥協」の誘惑

2025年6月号

 日替わりで続く「トランプ劇場」だが、5月の中東歴訪は、ひときわ大きな波紋を広げた。今回の3カ国訪問、表向きは経済協力や安全保障の強化がうたわれたが、舞台裏で重大な取引が交わされる、中東秩序再編のパワーゲームが繰り広げられた。焦点は米国とイランの核協議であり、米国はイランに合意を迫るための外堀を埋めることに、概ね成功したと言ってよい。
 訪問先の一つ、サウジアラビアのムハンマド皇太子は、「米国への投資を今後1兆ドル規模に展開していく」と、サウジの威信と資金力をこれでもかと誇示した。しかし、それは表向きの話にすぎない。裏では過去にない規模の軍事取引が進んでいた。
 米国とサウジが合意した武器売却総額は、実に約1420億㌦。ミサイル防衛、空軍・宇宙開発、海上安全保障、通信と、錚々たる米防衛企業10社以上が名を連ね、かつてないスケール感にサウジ政府関係者も「過去最大級の防衛協力だ」と興奮を隠せない。
 しかも、これは単なる「安全保障」の話では終わらない。隣国より一歩先んじる“質的優位”をめぐる競争は、国家の威信と王族の権力闘争にも絡む。サ・・・

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