タイ政界に返り咲いたタクシン派政権が早くも崩壊の危機に瀕している。約２年前に亡命先から帰国したタクシンは長年対立していた保守派エリート層と和解、国軍系政党との連立政権樹立に踏み切った。
　だが、時間の経過とともに連立政権内の亀裂は深まり、王室に連なる保守派は司法への影響力を使い、タクシン派の追い落としを始めた。

首相への辞任圧力

　６月18日、インターネットに流出した「音声クリップ」が大きな波紋を広げた。音声クリップは、タクシンの娘であるペートンタン首相とカンボジアのフン・セン上院議長の間で行われた電話会談のやりとりだった。タイとカンボジアの国境紛争地では５月28日、両国軍が衝突し、カンボジア軍兵士１人が死亡。両国間の緊張が高まる中、両者の“私的な”会談が６月15日に秘密裏に設定されていた。
　音声クリップには、ペートンタンがフン・センを「おじさん」と呼び、交戦に関与したタイ陸軍の司令官を「反対勢力の人物」と表現し、「何か望むことがあれば、私が対応します」などとお・・・