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日本の科学アラカルト 179

生命の神秘に迫る ボトムアップ型「人工細胞」研究

2025年7月号

 細胞とは生物を構成する基本単位だ。動物であれ植物であれ、体内に無数の細胞を持ち、エネルギー代謝などの生命活動が継続的に行われている。細胞の中には核と呼ばれる部分やミトコンドリア、リソソーム、微小管などがあり、それぞれが複雑に相互機能している。核には遺伝情報を司るデオキシリボ核酸、いわゆるDNAなどがあり、生物の体を作るためのすべての情報が詰め込まれている。細胞自体が小宇宙であり、その働きを追求することが即ち、生命について解き明かすことになる。
 そのための方法として近年注目されているのが、「人工細胞」の研究だ。脂質や核酸、タンパク質などを組み合わせて細胞の基本的機能を再構築する「ボトムアップ型人工細胞」と呼ばれる研究分野である。
 当然ながら複雑な細胞を人工的に作るのは容易ではない。たとえば、「細胞膜」ひとつとっても、その繊細な働きに驚かされる。前述したように、内部に多くの重要物質を抱える細胞を外部と区切っているのが細胞膜だ。その外側に細胞壁を持つ植物細胞でも、細胞膜はあり、「容器」として機能する。しかし単純に中身を保持するだけの容器では意味がない。たとえば、外部・・・