三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月刊総合情報誌

政治

戦後80年「石破談話」の空疎な攻防

参政党に侵食された「歴史認識」

2025年8月号

 石破茂首相の戦後80年談話にかける意気込みは並々ならぬものがあった。通常国会が始まった当初は「なぜあの戦争を始めたのか、なぜ避けることができなかったのか。検証するのは80年の今年が極めて大事だ」と繰り返し意欲を語っていた。
 議員会館の部屋に戦艦や戦闘機のプラモデルを飾る「軍事オタク」だが、昭和史に関しては故半藤一利、保阪正康両氏の著作を愛読するリベラル派。兵器や装備の性能、旧日本軍人の来歴に詳しい反戦平和論者だ。1月の国際シンポジウムでは「今年は敗戦後80年。あえて敗戦後と言うのは、終戦と呼んでは事の本質を間違えるからだ。今年を逃しては、あの戦争の検証はもうできない」と述べ、2025年度予算の与野党修正協議にめどが付いた2月末、談話作成の準備に着手するよう指示したとされる。
 ところが3月末、新聞各紙は「閣議決定による談話発表見送りへ」と一斉に報じた。政府としての公式な意思表明ではなく、首相の個人的見解をメッセージとして出すことになりそうだというのである。石破氏は同月9日の自民党大会でも「なぜあの戦争に突っ込んでいったのか。私たちはもう一度歴史に謙虚に学び、日本・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます