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連載

金融の世紀

第32 回【原油市場の「新たな台風の目」】
黒木 亮

2025年8月号

 1973年の第1次オイル・ショックから5年後の78年、世界は2度目のオイル・ショックに見舞われた。
 今度の震源地はイランだった。イスラム政権が樹立された「イラン革命」がその原因だ。
 同国では、親欧米・近代化路線をひた走って来たシャー・パーレビ政権の腐敗、経済の疲弊と物価高騰、農地改革の失敗、イスラム主義組織への弾圧などにより国民の不満が高まり、伝統的イスラム主義への回帰の流れが起きていた。
 この年1月、イスラム教シーア派の主流である12イマーム派の法学者でパリに亡命していたホメイニ師を中傷する記事を巡り、同派の聖地ゴムで暴動が発生した。それが全国に波及し、デモ、ストライキ、暴動、焼き討ちが各地で起きるようになった。
 原油の採掘施設や採掘会社ではストライキが起き、濃い鬚を生やし、目つきの鋭い、何百人ものイスラム原理主義者たちが集会を開く光景が見られるようになった。
 それまで日量450万バレルあったイランの原油輸出量は、11月初旬には、100万バレル以下へと激減し、12月28日には生産が完全に停止した。
 翌79年1月・・・

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