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社会・文化

胡散臭い「自然派ワイン」にご用心

「欠陥酒」を有難がる日本人

2025年8月号

 日本は世界で最もワインの知識と理解力が高い消費国の一つと見られている。データから見れば不思議はない。ブルゴーニュもシャンパーニュも世界で3番目の輸出市場であり続けている。ソムリエの数は航空会社の乗務員が多いとはいえ4万人を超して世界で最も多い。中国がかつての勢いを失う中で、世界中の有名生産者が続々と来日している。
 ワイン先進国であるはずのその日本で今、最も人気を集めているのが“自然派ワイン”である。コロナ禍で抜け殻になったテナントに、ワインバーが出店しているのを見ると、その多くは自然派ワイン(ナチュラルワイン)の品揃えを売りにしている。オンラインのワインショップにも、ナチュラルワインの謳い文句が氾濫している。「ナチュラルワイン」とつければ客を引き付けられるようだ。
 ナチュラルワインのルーツは1970年代後半から80年代にかけてボジョレーに広がったマルセル・ラピエール、ジャン・フォワイヤール、ギィ・ブルトン、ジャン・ポール・テヴネらギャング・オブ・フォー(反逆者4人組)と呼ばれた造り手の思想的なアプローチにさかのぼる。4人は栽培醸造に科学・・・

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