戦後80年の節目に、ヨーロッパは外敵と内患が同時に押し寄せる未曽有の地政学リスクに直面している。ロシアのウクライナ全面侵略で顕在化した安全保障上の脅威が強まっているところに、長年の同盟国だった米国がトランプ政権下で変節して「ヨーロッパ攻撃」ともいえる心理的・経済的な打撃を与えている。そこに中国がじわり擦り寄り、欧州企業を経済的にからめ取る。
　すなわち米国・ロシア・中国という三つの覇権国家による多方面圧力を受けている。しかも域内ではナショナリズムを標榜する極右勢力が躍進する。
　長年、「リベラルの砦」と語られてきたヨーロッパは音を立てて崩れ始めたのか。日本も中国・ロシア・北朝鮮という独裁国家に囲まれ、米国が守ってくれるかどうかもわからない。７月20日の参院選では大衆迎合主義（ポピュリズム）政党が躍進した。四面楚歌のヨーロッパからの教訓はなにか。

 【ロシア】見えざる戦争の拡大
 
　バルト三国の一つであるエストニア東部にナルヴァという小都市がある。人口６万・・・