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経済

再生医療ベンチャー 「総崩れ」の日本

安倍政権「成長戦略」の負の遺産

2025年9月号

 日本で、再生医療バイオベンチャーの低迷が続いている。2020年以降に上場した20社のうち17社が、8月15日現在、上場時の時価総額を下回り、投資家の期待を裏切っている。厳格であるべき医薬品の承認基準を緩め、お手盛りの制度を創設したことが背景にある。それは医学研究の信用失墜も招いた。このままでは世界から取り残されるばかりだ。
 この制度は、「条件付き早期承認制度」(以下、早期承認制度)という。2014年に当時の安倍政権が創設した。開発した新薬の市販後の追加検証を条件に、小規模の臨床試験に基づく承認が可能となった。成長戦略の「三本の矢」の一環として、再生医療を日本発の新産業として育成する狙いがあった。
 通常の医薬品開発なら第1~3相の3段階の臨床試験をクリアしなければならない。ところが早期承認制度では第1相レベルだけでいい。第1相を通過しても、最終承認に至るのは約1割だから、大量の無効な治療が承認されてしまう。

「非科学的」なレベル

 現在、この制度を用いた申請が相次いでいる。8月5日、大・・・

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