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社会・文化

コメ「増産」は国民を欺く茶番

遠のく「減反廃止」と抜本改革

2025年9月号

「どうも、すいませんでした」―。8月8日朝、東京・永田町の自民党本部で、農林水産省の渡邊毅事務次官以下、スーツ姿の幹部9人が深々と頭を下げ、農林議員に陳謝した。議員側はワイシャツ姿で朝食の箱弁当をつつきながら、事務次官がマイクを握りしめ「これまで(米は足りていると)申し上げてきましたが間違っていました」と弁明するのを無表情で聞く。米政策を担当する山口靖農産局長ら幹部はうなだれたまま立ち尽くす。取材陣が室内に呼び込まれ、農水省にとって屈辱的な「陳謝」の模様が報道された。まるで公開処刑だ。農林議員が事務次官を呼び付けて陳謝させるのは「自民党農政では初めて」(党事務局OB)の珍事という。
 ことの発端は、3日前に「増産にかじを切る」と米政策の転換を表明した石破茂首相の方針だ。「令和の米騒動」について、農水省は流通に問題があると説明し、供給不足を全面否定してきた。だが5日に首相官邸で開かれた「米の安定供給等実現関係閣僚会議」で一転、「需給判断を誤った」と自己批判。「米はある。どこかにスタック(停滞)している」と言い張った江藤拓前農相の面目は丸潰れだ。
 農水省の潔さは評価し・・・

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