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社会・文化

「国際保健支援」という利権の魔窟

血税を浪費する「穀潰し基金」

2025年9月号

 グローバルヘルス技術振興基金(GHIT)という公益社団法人がある。開発途上国向けの治療薬、ワクチン、診断薬の製品開発に対して投資を行う、日本発の官民パートナーシップ型組織だ。コロナパンデミックを通じ、グローバルヘルス対策の重要性は再認識された。この組織に期待したいのだが、内実は問題だらけである。そもそも支援に必要な組織なのかという疑問が浮上する。
 この基金は2012年、日本政府、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、国内製薬企業の協力により発足した。23年5月のG7広島サミットで、岸田文雄首相(当時)は2億㌦の拠出を表明し、世界各国のメディアは好意的に報じた。しかし関係者は「理念こそ立派だが、実態は国際保健ムラの談合」と指摘。「税金をドブに捨てるようなもの」とまで酷評する。
 GHITは、毎年政府から支払われる補助金と寄附金を研究機関に分配する。24年度の経常収益は52・9億円で内訳は政府からの補助金45・6億円、寄付金7・2億円だ。諸経費を差し引いた43・5億円が製薬企業や研究機関に助成され、当期一般正味財産増減額(当期利益)はゼロである。
 これまでに186・・・

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